石舞台太陽祭祀施設説(古代天文台説:概要)
1.背景と目的
当会は16年間に渡り、地域活性化を目的に地元愛媛県松山市にある白石の鼻巨石群の調査研究、情報発信を続けてきました。
夕日と巨石群が織りなす神秘的なコラボレーションを観てもらう二至二分に合わせた夕日の観賞会は延べ60回以上を数えます。
以前より白石の鼻の冬至の観測点である「亀石」と奈良県・明日香村にある石舞台遺跡の類似性に非常に興味を持っており数年前より調査研究を続けてきました。
そして、昨年の冬至である2023/12/21~22にかけて観察、調査した結果、自然ではありえない特異な天体現象を観測しました。その後、検討、解析を重ねた結果、古墳ではなく、白石の鼻巨石群と類似した古代天文台との結論に達しましたので発表します。
2.古代の天文台と主張する主な根拠
石舞台遺跡の石室最奥から、入口天井石越しの開口部(天窓)から空が見通せ、特定の時期(冬至前後)には太陽を見ることができる。逆に言うと、太陽光は奥壁を照らすことができる。今回、冬至という特異日に奥壁の最下段の巨石に存在する「岩脈」の線と光跡の上端が一致することを確認した。
写真1:天窓中央に来る冬至頃の太陽
写真2:天窓中央に冬至頃の太陽が来ることが分かる。1)
- 冬至(12/21)の13:32~33分に太陽の軌道はN205.2~N205.6度となり石室と正対し、入口天井石・上部の「天窓」の中央に位置し(写真1)、通過した太陽光が奥壁に光跡を残す。
- その時、奥壁に存在する白い岩脈の曲線と光跡が一致する。
- この現象は天体観測シミュレーションソフトであるステラナビゲータを利用したアナレンマ図の解析でも補完的に確認することができた。
- 入口天井石には中央を指し示すように黒色で直線を描いている。
- この現象はアイルランド・ニューグレンジ遺跡やエジプトのアブ・シンベル神殿と似た人為的設計・築造に基づいた天体現象である。
- 白石の鼻巨石群の「亀石」を含む冬至頃の天体現象とも類似性を持っている。
1):ステラナビゲータの解析については日本天文考古学会の樋口元康氏に作成協力いただいた。
3.古墳ではないと主張する主な根拠
写真3:石室内の排水溝は大規模で石室を周回させている。奥壁は光跡を映す巨大な銀幕である。
- 石舞台遺跡は封土に覆われていなくて隙間だらけある。また、南西方向に大きく開口されており太陽光を巨大な石室(玄室)に取り入れるように最適に築造されている。
- 一般的な横穴式石室の古墳とは異質で、雨水の流入を前提として築造しており、石室(玄室)内に大規模な排水路を周回させて、参道(羨道)の排水路へ接続している(写真3)。
- 同じ横穴式石室である明日香の岩屋山古墳では、石室内部の壁面は雨水の侵入をできるだけ防ぐように巨石を密着させ、漆喰などで厳重に密閉されている。羨道の入口の石には雨水侵入防止用の水切りの溝も掘られており、大切な石室への水や湿気の侵入を厳重に防いでいる。
- 参道(羨道)に天井石がなく、かつ参道の排水路が暗渠になっていない。封土すれば排水機能が失われる。
- 石舞台遺跡の石室では石棺が発見されていない。また、人骨や副葬品も発見されていない。
- 横穴式石室と言われているもので玄室から太陽光を見通せる構成のものは石舞台遺跡以外に存在しない(筆者調査範囲)。
4.結論
これまで述べてきた点から石舞台遺跡は古墳というよりも、太陽の観測を行ったり、太陽と水に関係するような宗教的儀式をする施設だったのではないだろうか?
現時点(2024年6月時点)では少なくとも冬至の太陽軌道に合わせていることは判明しているので「石舞台遺跡は太陽の観測機能を現在でも有している」ということで(「石舞台遺跡~太陽祭祀施設説)として発表する。
石舞台遺跡は海外でも著名な日本の古代遺跡である。国内外の研究者からのご意見、ご批評をいただければ幸である。
5.説明会等
- 2023/6/20(木)19:15~20:45
白石の鼻巨石群で解く石舞台古代天文台説(大阪) - 2023/6/30(日)14:00~16:00
白石の鼻巨石群で解く石舞台古代天文台説(松山)